上高地について

中部山岳国立公園の中にある上高地とその周辺は、そのほとんどが自然公園法による国立公園特別保護地区。
国立公園の中で最も規制が厳しく、自然を厳正に保護する目的でごく限られた公共事業や計画に基づく山小屋、歩道などだけが認められる他は原則として一切の施設や現状を改変する行為は許されません。が…

大正池の浚渫

大正4年の焼岳大爆発による土石流が梓川をせき止めてできた大正池。この池を発電用の貯水池として利用する霞沢発電所が1928年にできた当時の湖の総容量に比べ、上流域や焼岳から流入する土砂により50年後の1976年には1/9に減少。発電に必要な水量確保と地元からの大正池の景観保護の要請を受け、翌年から東京電力による浚渫工事が始まり、現在も年間の浚渫量2万㎥前後の大規模な浚渫を続けています。

東北大震災以降自然エネルギーを有効に活用する意義は高まっています。その観点からすれば浚渫はアリのようにも思えますが、観光資源を保全するという点をあわせ、経済的な理由で行われ続けていると言えます。

梓川護岸工事

梓川の護岸工事は広範囲で…

上高地は梓川が運ぶ土砂の堆積によってできた標高1,500mの高地に帯状に広がる平野。現在の梓川クランク他の場所を見てもわかるように、洪水時には激しく蛇行したであろう事は容易に想像できます。大正池に浚渫が必要となる理由のひとつに、梓川が流れる水によって川底が削られないよう、堤防護岸とともに行われる根固工などの砂防工事がされたことによる河床上昇も上げられます。

暴れる河川を護岸工事で押さえ込むという発想を持ち込まざるを得ないのは、既得利権をもつ旅館・ホテルなどの施設保護が目的であって自然保護の観点からは大きくかけ離れています。

トンネル掘削

まるで下界との関所のような上高地の入口・釜トンネル。先述の大正池を貯水池として利用するための工事車両用として掘られ崩落と掘削を何度も繰り返したた暗く狭い旧釜トンネル、2005年に利便と安全を目的に拡大・開通した現在の釜トンネル、中ノ湯近くから岐阜県・平湯を繋ぐ安房トンネル、2028年共用開始の予定で崩落事故を避ける目的で県道上高地線の一部で掘削が行われている上高地トンネル。

この山奥の辺境の地にいったいどれほどトンネルを掘削すれば気が済むのでしょうか。
トンネル掘削は植生に影響があることははもちろん、地下水系にも甚大な影響があるでしょう。莫大な公費をかけて自然を破壊して作ったトンネルが百年もつ訳でなし…

大正池の自然な姿は元の梓川に戻ること。梓川が暴れて地形や景観が変わる、人造物・構造物が壊れてしまうのは自然の摂理。経済活動や既得権から自然を管理しようとする手法と理屈には無理・矛盾があります。爽やかな大自然に手を付けず、護り続けることは難しいとは知りつつも、ウエストン卿のように涙するほどの感動は得られない、二度と戻れない方向へ進みつつあるのではないでしょうか。

入山総量規制が囁かれる昨今、思い切って上高地へは徒歩でしか入れないようにしたらどうでしょうか。自然公園法で機械力によるもでなく人間が自分の力のみによって自然に対する、とされていますしww。 年間150万人とも200万人言われる来訪者は激減、経済活動を営む方々は大打撃でしょうが、自然は時間をかけて確実に自然へと回帰するでしょう。(「冬は入るな」とか言ってる地元の方、これなら工事もなくなって入れなくなりますよ。)

自然公園法の目的に「すぐれた自然の風景地を保護するとともに、その利用の増進を図る」とあると反論されるのを承知の上で。